コラム

2023.12.19

来店客数予測システム開発の背景とその応用領域

システム

来店客数予測

来店客数予測システム開発の背景とその応用領域

1.はじめに

ビジネスの現場、特に流通業の現場においては、日々膨大な量のデータが発生していますが、それらデータの活用と言えば、データを集計してさまざまな実績表を作り、そこから営業成績の評価や課題の発見等に利用しているのがまだ主流であると言えます。

しかし、ビジネス変化のスピードは速く、また企業間競争も厳しさを増している状況の中で、データを過去の分析だけに留めておくのは、極めてもったいない話であると言えます。
では、日々発生する大量のデータをどのように活用すべきなのか?

その一つの答えとして、我々は「これから先に起こり得ることへの予測にデータを活用すべきである」と考え、その実現に向けてチャレンジしてきました。ビジネスの現場では過去の分析結果を見せるだけではなく、これから起こるであろうことを明確な数字で伝えることが重要だと考えています。

2.来店客数予測システム開発の背景

そもそも「今日、お客様は何人来るのだろうか?」とか、「ピーク時間帯には、お客様は何人くるのだろうか?」という基本的でかつ大切なことを正確に把握していないケースが流通業の現場では多く見受けられます。

流通業における売上式は、「売上金額 = 客数 × 客単価」で表わされることは良く知られているが、売上式の中の「客数」という変数がそもそも不確実では、売上金額の予測を正確に行うことは不可能であることは明白です。また、売上式は、店舗別、部門別、分類別、単品別でも同じ式が適用できることから、変数である「客数」を精度よく予測することは、さまざまな面で効果的であると言えます。この様な認識から、より客観的で精度の高い「客数」を予測することに取り組んだ次第です。

そこで、「客観性」や「精度」という面から、何らかの統計手法を活用すべきであると考え、種々検討、検証の結果、「客数」に影響を与える複数の変動要因(天気、曜日、イベント、など)を同時に取り扱い可能な「多変量解析」が有効であるという結論に至り、更に複数ある多変量解析の中から、最も適していると思われる「回帰分析手法」を活用することとしました。

但し、予測された「客数」は、ただそれだけで実務的な意味をなすものではなく、何らかの業務に活用して初めて実務的な意味をなすものであると考えています。

3.来店客数予測システムの応用領域

来店客数を活用できる応用領域を大きく分けると、‘マネージメント領域’と‘マーチャンダイジング領域’の2つに分けられると考えています。

4.マネージメント領域

マネージメント領域では、月間勤務計画や日次作業計画など、事前に行う計画業務が中心です。いずれも固定的に必要となる固定MH(マンアワー:人時)と来店客数の大小で変動する変動MHがあり、その合計が必要MHとなっています。従って、来店客数を正確に予測することは、必要な人員の確保や作業段取りを正確に行う上での前提条件になっていることを意味しています。

5.マーチャンダイジング領域

一方、マーチャンダイジング領域では、必要な商品を必要な時に必要な量だけ調達することが重要なテーマであり、その為の需要予測や発注計画などが中心となっています。マーチャンダイジング領域では、特に需要予測が何と言っても重要であり、将来起こり得る状況を判断して、より正確な需要を予測することが求められます。

我々は、需要予測の式を以下のとおり定義しています。
「需要予測 = 来店客数 ÷ 100 × PI値」(注:PI値=客数100人当りの売上数量)」
(例)PI値=1.5の商品の場合、客数1,000人では(1,000÷100)×1.5=15個となる
PI値は、販売単価やチラシ広告掲載の有無、気温や湿度などと言った要因で変動するものであり、販売単価が安ければより多く売れるだろうし、気温が高ければ飲料水はより多く売れるだろう、ということは容易に想像ができると思います。

しかし、実際には商品によって販売単価と販売数量に明確な関係があるものと、必ずしも明確な関係があるとは言えないものがあり、PI値を正確に予測することは、現実的にはかなり難しいと言えます。

6.具体的に開発した応用システム

いずれにせよ、マネージメント領域であろうと、マーチャンダイジング領域であろうと、来店客数の正確な予測は極めて重要であると考えています。

今回、我々は従来から小売業で作成されている「レジシフト表」を予測客数から自動的に作成する「レジ稼働計画システム」に応用することとしました。「レジ稼働計画システム」は世の中に数多く存在すると思いますが、統計手法を使って来店客数を予測し、その予測客数から自動的に「レジシフト表」を作成するシステムは、現時点ではあまり存在しないのではないかと思っています。特に、気象データとリアルタイムに連動し、時々刻々変わる気象状況をもとに来店客数を1時間ごとに予測するシステムは存在しないと考えています。

なお、我々が開発したシステムは、マネージメント領域(人と作業)に的を絞っていますが、マーチャンダイジング領域(商品と利益)に関しても、今後是非取り組みたい領域だと思っています。

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