シフト表の作成や管理にExcel（エクセル）を活用している企業は少なくありません。
無料で使え、柔軟にカスタマイズできるはエクセルならではのメリットです。
とはいえ、運用が長期化したり規模が拡大したりすると、使い方によっては思わぬ課題が発生することもあります。
本記事では、エクセルを使ったシフト管理の「メリット」「デメリット」「活用時の注意点」に加え、システム導入がおすすめな理由についても整理しました。

1.シフト管理におけるエクセルのメリット

シフト表を作成する際、エクセルを使っている職場は今でも多く見られます。
導入のしやすさや自由度の高さから、専用システムではなくエクセルで運用しているケースも少なくありません。
実際に、エクセルにはシフト管理に適したさまざまな利点があります。
たとえば以下のようなポイントは、エクセルならではのメリットといえるでしょう。

・自由にマクロや関数を組み込むことができる
・無償のテンプレートが豊富にある
・スプレッドシートと勤務シフト表との親和性が高い
・ガントチャートと作業割当表との親和性が高い
・エクセルで作成したフリーソフトが利用できる

それぞれについてまとめましたので参考にしてください。

(1) 自由にマクロや関数を組み込むことができる

エクセルは、マクロや関数を自由に組み込める柔軟性が魅力です。
特に、VLOOKUPやIF、SUMIFなどの関数を活用すれば、複雑な条件にも対応したシフト表が作成できます。
また、VBAで自動化を図れば、手作業の工数を減らし、ヒューマンエラーの防止にもつながるでしょう。
現場の運用に合わせて「カスタマイズできる」という点は、他のツールにはないエクセルならではの強みです。

(2) 無償のテンプレートが豊富にある

エクセルは、インターネット上に無料で使えるシフト表テンプレートが豊富に存在します。
テンプレートを使えば、ゼロから作る必要がなく、業種や運用形態に合ったフォーマットをすぐに試せる点がメリットです。
とくに飲食業や小売業など、似たような業態で使えるフォーマットが数多く公開されており、導入のハードルが非常に低くなっています。
手軽に始められる分、初期コストを抑えてシフト管理を効率化したい現場には適した方法といえるでしょう。

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(3) スプレッドシートと勤務シフト表との親和性が高い

勤務シフトは、時間・日付・担当者といった情報を表で整理する必要がありますが、スプレッドシート形式のエクセルとは非常に相性が良好です。
行と列で情報を整然と管理できるため、複雑な勤務パターンや週ごとのシフト変更も視覚的にわかりやすく反映できます。
また、色分けや条件付き書式を使えば、重要な情報を一目で把握しやすくなり、現場でも好まれる形式です。
こうした構造の親和性は、エクセルが今なおシフト管理に選ばれ続けている理由のひとつといえるでしょう。

(4) ガントチャートと作業割当表との親和性が高い

エクセルは、ガントチャート形式の作業割当表とも相性がよく、工程の進行状況や人員配置を視覚的に管理できます。
特に、時間軸に沿った作業の可視化や、担当者ごとの作業量を比較したい場合には、横軸と縦軸で表現できるエクセルの構造が活かされます。
無料のガントチャートテンプレートを活用すれば、プロジェクト管理や業務分担にも応用可能です。
作業の「見える化」を重視したい職場にとって、エクセルは有力な選択肢となるはずです。

(5) エクセルで作成したフリーソフトが利用できる

ネット上には、エクセルをベースにしたフリーソフトも数多く公開されています。
勤怠集計やシフト自動作成など、特定の業務に特化した機能を備えており、導入も比較的簡単です。
マクロ付きのシートやUIが整ったファイルを使えば、通常のエクセル操作に慣れているスタッフでもすぐに扱える点が利点といえます。
市販ソフトに比べて導入コストがかからず、試験的に運用を始めたい現場にとっては非常にありがたい存在です。

2.シフト管理上でのエクセルのデメリットとは

エクセルはシフト管理の初期導入に適していますが、運用を続けていくと次第に限界を感じるケースもあります。
とくに規模が大きくなったり、勤務形態が複雑化したりすると、エクセルだけでは対応が難しくなることがあります。
ここでは、よく見られる3つの課題について整理しました。
・大人数のシフト管理が困難
・複雑なシフト作成ができない
・各店舗でアレンジできるため統一感が失われやすい
以下、それぞれについてまとめました。

(1) 大人数のシフト管理が困難

エクセルでは、人数が増えるほど管理の煩雑さが増していきます。
一画面に収まらないスタッフの勤務状況を把握するには、スクロールやシートの切り替えが必要になり、確認作業に時間がかかってしまいます。
たとえば50人以上のシフトを日々調整する現場では、ファイルが重くなり、操作性にも影響が出てきます。
こうした背景から、大人数のチームを扱う業態では、エクセルよりも専用の管理ツールのほうが現実的でしょう。

(2) 複雑なシフト作成ができない

エクセルでは、柔軟なシフト調整や複雑な条件に対応しきれない場合があります。
たとえば「週40時間以内」「深夜勤務の回数制限」など、労務上のルールを考慮したシフトを組むのは容易ではありません。
関数やマクロである程度の制御は可能ですが、設定が複雑になればなるほどエラーのリスクも高まります。
結果的に、法令遵守や公平性の面で不安が残りやすい点は見逃せません。

(3) 各店舗でアレンジできるため統一感が失われやすい

エクセルの自由度はメリットである一方、各拠点や担当者ごとに構成が異なると、全体の統一感が保てなくなります。
フォーマットやルールがバラバラになると、本部がデータを集計・比較する際に手間がかかる原因に。
全社的な運用ルールを設けても、エクセルの性質上、運用ごとの差が生まれやすい点には注意が必要です。

3.エクセルでシフト管理を行う際の注意点

エクセルは自由度が高く便利なツールですが、シフト管理に使うとなると注意すべきポイントもあります。
特に、ミスの防止や運用の継続性を考えるなら、日々の使い方に工夫が求められます。
より安全かつ安定的な運用が実現をするための注意点を3つ紹介します。

・データのバックアップをこまめにとる
・権限設定とパスワード保護を活用する
・複雑すぎる関数やマクロを使いすぎない

以下、それぞれについてまとめました。

(1) データのバックアップをこまめにとる

エクセルはファイル単位で運用されるため、ファイルが壊れたり上書きされると、復元が困難になる可能性があります。
特にクラウド環境を使わないローカル管理の場合、バックアップを取っていなければ、過去の履歴や証跡がすべて失われることにもなりかねません。
「前日のデータに戻したい」と思ったときに備えて、バージョンを分けて保存したり、定期的に外部メディアへ保存したりする対策が必要です。
ほんのひと手間ですが、運用の安定性を大きく左右するポイントといえるでしょう。

(2) 権限設定とパスワード保護を活用する

エクセルファイルは誰でも編集できるため、管理者以外が誤って内容を書き換えるリスクがあります。
複数の担当者で共有している場合、意図しない修正が行われていたというケースも少なくありません。
これを防ぐには、シートごとに保護をかけたり、ファイル自体にパスワードを設定したりすることが効果的です。
責任の所在や履歴を明確にするためにも、アクセス権の管理はきちんと行っておきたいところです。

(3) 複雑な関数やマクロを使いすぎない

関数やマクロを使うことでエクセルの利便性は大きく高まりますが、依存しすぎるのも危険です。
というのも、作成した本人しか仕組みを理解しておらず、担当者が交代するとファイルがブラックボックス化してしまうケースがあるからです。
実際、関数の修正ミスやマクロの動作不良によって、シフト表が機能しなくなってしまう事例も見られます。
長期的に使い続けることを前提に、第三者でも読みやすく、シンプルな構成を意識することが重要です。

4.エクセルよりもシフト管理システムがおすすめな理由

エクセルはシフト管理における定番ツールですが、効率性や正確性、チーム全体での運用という観点では限界もあります。
とくに人員が多くなったり、急な変更対応が求められたりする現場では、システム導入の効果が顕著に表れることもあります。
ここでは、シフト管理システムをおすすめする代表的な理由を3つ紹介します。

・自動で最適なシフトを組める
・急な変更やシフト調整にも柔軟に対応できる
・勤怠管理や給与計算と連携できる
以下、それぞれについてまとめました。

(1) 自動で最適なシフトを組める

シフト管理システムの最大の魅力は、自動作成機能によって手間を大幅に削減できる点です。
スタッフの希望や出勤条件、法令に基づいたルールをあらかじめ設定しておけば、システムが最適な配置を提案してくれます。
同じスタッフに早番と遅番が連続しないように配慮したり、特定の時間帯にスキルを持った人材を配置したりすることも可能です。
人の手では見落としがちなポイントもカバーできるため、精度とスピードの両立が期待できます。

(2) 急な変更やシフト調整にも柔軟に対応できる

エクセルでのシフト変更は、担当者が手動で更新し、各スタッフに連絡を取る必要があります。
しかし、シフト管理システムであれば、変更点を即反映でき、スタッフにもリアルタイムで通知が届く仕組みが整っています。
スマートフォンやタブレットからもアクセス可能なため、現場で急な欠員が出た場合でもすぐに確認・対応できる点は大きな強みです。
業務のスピード感が求められる環境では、この即応性が非常に頼もしい機能となります。

(3) 勤怠管理や給与計算と連携できる

シフト管理システムの多くは、勤怠管理や給与計算と連携できる機能を備えています。
出勤実績が自動的に反映されることで、集計ミスや転記ミスを減らせるうえ、月末の締め処理もスムーズになります。
例えば勤怠管理システムとの連携では、打刻情報とシフト表の突合が自動で行われ、休憩時間の控除や残業時間の集計も正確に反映されます。
業務全体のデジタル化を進めたい職場にとって、シフト管理システムの導入は大きな一歩になるでしょう。

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