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人手不足に対するレストランの工夫(米ニューヨークタイムズ紙)

2018年10月17日

海外ニュース

アメリカのレストラン業界のニュースをご紹介します

以前、イギリスのシェフ不足のニュースをご紹介しました。今回はアメリカのレストラン業界の人手不足について、ニューヨークタイムズ紙が伝えた記事をご紹介します。舞台はアメリカの首都ワシントンD.C.です。この街はホワイトハウスなどの政府機関や著名な大学が集中する政治と学術の中心地として知られる一方、料理やレストランの方はそれほど有名ではなかったそうです。そんなワシントンD.C.の飲食業界で、一体何が起こっているのでしょうか?

人手不足に対するレストランの工夫

『ワシントンD.C.で何軒かのタコス料理店を営むVictor Albisu氏は、厨房から店内を覗いて恐怖を感じている。お客が大勢来店しているというのに、一体誰が調理をし、注文を取り、洗い物をするというのだろうか?  実はこのところ店員の退職が後を絶たないのだ。あまりの多忙に料理人たちは次々と辞めてしまい、ウェイターもいなくなった。悪循環は止まらない。労働市場に人が少ない上に、次々と新しいレストランができるので、従業員を雇い入れ維持することがこれまで以上に難しい状況になっている。

全米レストラン協会(NRA)の調査によると、会員企業の37%が従業員の採用が一番の課題だと答えている(2年前には15%だった)。レストラン業界は利益率が低いため、他の業界と違って、人手不足になっても賃上げができないのだ。レストランのオーナーたちは、労働者たちを引きつけ、維持するために他の方法を見つけ出す必要がある。

レストラン業界の成長ぶりは明らかだ。米労働統計局の調査によれば、2016年の第3四半期から2017年の第3四半期にかけて、1万5千以上のレストランが開業しており、これは2.5%の純増である。飲食サービスと給食事業を手掛ける巨大企業、北米ソデクソ社の人事部長は「今や誰もが外食をするのです。シェフや現場の調理人、あらゆるレストラン従業員を求めて、私たちは戦っています」と述べている。

高い技術力のある従業員の需要は、特にワシントンD.C.で高まっている。創造力のあるシェフによるレストラン開店のブームに、労働人口が追い付かないのだ。有名なガイドブックによれば、かつて料理の世界では二流の街とされてきたワシントンD.C.は今や、全米でもっとも注目を集めている都市であるという。

専門家らによると、レストラン業界は昨今の不法労働者に対する取り締まりに肝を冷やしているという。皿洗いなどの低賃金労働者は不法労働者から採用されていたからだ。NRAのShannon Meade氏は「我々の業界は、低スキルの従業員のための一時滞在ビザの制度が必要だと考えています。(今は季節労働のビザしかないが)もし通年のビザがあれば、飲食業界の雇用問題に対処できるのに」と述べている。

人材スカウト会社を経営するChris Floyd氏は「もともとワシントンD.C.は、飲食に興味のある人を引き付ける街ではないことが問題の核心なのです。人々は政府で働いたり大学院に通ったりするためのこの街に来るのであって、飲食業界の経験を積みたくて来る人なんていませんよ」と語る。飲食などのホスピタリティ業界の発展に、人口が追い付いていないのだ。

そこで、料理人やレストランのオーナーは採用活動をより広い形で行なっている。ユニオン・スクエア・ホスピタリティ・グループの創業者であるMeyer氏はワシントンD.C.で行われたパネルディスカッションで、「この業界の入ってくるのがどういう人たちかというステレオタイプを壊すことが必要です」と述べた。「我々は今まさに、5年前なら考えもしなかったような組織と就職フェアを行なっているのです」という。この組織とは、学習障害者を補助する団体や高齢者、前科者の団体などである。

ワシントンD.C.の多くのレストラン経営者は、D.C.セントラルキッチンという団体に頼っている。これは前科者や以前ホームレスだった人、回復中の中毒者に訓練を行なう団体である。過去2年で卒業者の87%が職を得ることができたという。NRAも仕事の見つからない高校生や大人向けに、いくつかの授業を開始したところだ。これには、米国労働省を通して企業の見習い従業員になったり、退役軍人を飲食業界に就職させるなどの計画が含まれている。

タコベルとマクドナルドは、従業員が大学の授業料を払う手助けをする制度を拡充すると発表した。ボストン・アーバン・ホスピタリティ社のオーナー兼シェフ、Chris Coombs氏は、従業員の調理学校の授業料を代わりに返済すると提案している。「うちの料理人は皆、学生ローンの負債を抱えているのですよ」とCoombs氏は語る。彼は20~30人の料理人が必要になる厨房の不愉快な大掃除を外注することにした。「最近の若い人たちは、生活の質を重視するのですよ」と彼は言う。また、従来の厨房でよく見られた、大声で怒鳴りつける指導方法も禁止した。全米にレストランを展開するMichael Schlow氏は、ワインやスピリットに関する講座を従業員に受講させたり、シェフをイタリアに派遣して研修させたりしている。

「レストランは従業員を大事にすることを学ばねばならない」と、レストランRose’s Luxuryを経営するAaron Silverman氏は言う。「レストランが他の業界と同じように経営されることが目標なのだ」』(2018年4月5日、ニューヨークタイムズ紙)

イギリスのレストラン業界との違いと共通点

イギリスのシェフ不足のニュースでは、イギリスのEU離脱が料理人不足の原因の一つとして挙げられていました。これに対し、今回のワシントンD.C.の記事では、レストランの増えすぎと不法労働者の取り締まりが人手不足を引き起こしているとしています。このあたりに両国のお国柄が表れていると思われます。一方で、従業員のワークライフバランスや生活の質を重視しようという動きが見られることは、両国に共通しています。日本も含め、働き方改革は世界的な潮流になっているのかもしれません。