国内外ニュース WORLD & NATIONAL NEWS

イギリスの深刻なシェフ不足(英ガーディアン紙)

2018年08月22日

海外ニュース

イギリスのレストラン業界に関するニュースをお届けします

第2回目の『国内外ニュース』では、イギリスの新聞ガーディアンの記事をお届けします。
読者の皆様は、イギリスと聞くとどんなイメージをお持ちになるでしょうか? 壮麗なバッキンガム宮殿やビッグベンなどの観光名所のほか、英国紳士や『ハリー・ポッター』、そして紅茶を飲む文化などを思い起こされる方が多いと思います。 あるいはスポーツ好きな方なら、マンチェスター・ユナイテッドのようなサッカーチームかもしれません。
そしてもう一つ、イギリスの食事のことを思い出される方も多いのではないでしょうか。 イギリスに行ったことのある方もない方も、「イギリスの食事はおいしくない」という噂を一度は耳にされたことがあると思います。 かつて七つの海を支配し、偉大な科学者や思想家を数多く輩出した大英帝国でなぜ料理がそれほど発達しなかったのか、たいへん不思議なことです。
もっとも、このところはイギリスの食事もずいぶんと改善されてきているようです。 ジェイミー・オリバーのような著名なシェフがテレビで活躍し、イギリスの料理にも注目が集まるようになりました。 そんなイギリスのレストラン業界の舞台裏で、今何が起こっているのでしょうか。

イギリスの深刻なシェフ不足 -なぜ外食が危機に瀕しているのか-

2018年3月18日、英ガーディアン紙は「イギリスのシェフ不足が深刻」という記事を掲載しました。

シェフやソムリエが次々と辞めていく

記事は、ロンドンにあるゴティエ・ソーホーというフレンチレストランの求人にまつわる出来事から始まります (以前、このお店は日本のテレビ番組に登場したことがあるので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません)。 オーナーのアレクシス・ゴティエ氏が、1年働くごとに高額な「退職金」を支払うという条件で求人を出したというのです。 この求人はたいへんな評判となり、シェフやソムリエなどの3人分の求人枠はたった2週間で埋まってしまいました。
ところが、ガーディアン紙の記者が半年後に訪ねてみると、3人のスタッフは全員お店を退職していたのです。 1人はフランスの実家に帰り、もう一人はイタリアに帰国、残りのソムリエは醸造学の研究に戻ってしまったのでした。 幸い、ゴティエ氏自身はシェフなので、自分が厨房に入ることによってお店の運営を続けることができたそうです。

イギリスにおけるシェフ不足の背景

英国ホスピタリティ協会が昨年行なった調査によると、イギリスのEU離脱によりEU圏内からの労働力が不足することで、 イギリスのホスピタリティ産業は雇用の危機に陥り、今のままでは2029年までに100万人以上の人手不足が起こると述べています。 それを防ぐためには、業界の現状維持と成長強化のために必要な毎年20万人の採用のほか、毎年追加で6万人を雇用しなければならないとしています。
シェフ不足の背景には、若者が外食業界に入る際、伝統的な方法を取らなくなったことがあります。 伝統的なレストランで修業をするのではなく、キッチンカーを出して自分で起業しようと考える若者が増えたのです。
また、イギリスにおけるシェフの地位の低さを指摘する声もあります。 フランスやイタリア、スペインでは、料理人であるということは会計士であるのと同じくらい誇らしいことなのです。 ゴティエ氏は「15歳前後の若者たちを見習いにして、1週間は料理学校に通わせ、1週間はレストランで修業させる必要がある。シェフやウェイターを 育てる料理学校は国費で運営し、卒業するときには立派な卒業証書を渡して、それを持ってることが誇りだと思うようにしなくては」と述べています。

ワークライフバランスの改善を図るレストランも

一方で、レストラン業界の厳しい労働環境を改善しようという動きもあります。ヨークの名店ル・コション・オーベルジュのオーバーリントン氏は、 昨年夏より夜の営業を週4日に減らしたのです。オーバーリントン氏は「小さなレストランが営業日数を減らすというのは明らかにリスクのあることだが、 従業員のワークライフバランスのためには意味のあることだと考えている」と述べています。